令和元年8月7日東京地方裁判所で不動産業者にとっては打撃となる可能性のある裁判例が出されました。
仲介業者が家賃1ヶ月分の手数料を請求する場合は、物件の仲介をする前に借主の承諾を得る必要がある。
国土交通省告示(昭和45年10月23日建設省告示第1552号)「宅地建物取引業者が宅地又は建物を売買などに関して受け取ることができる報酬の額」で、宅地建物取引業者が賃貸の仲介手数料として受け取ることができる額が定められています。
https://www.mlit.go.jp/common/001213871.pdf
国土交通省の告示によれば、仲介業者は賃料の1ヶ月分に相当する金額を上限として仲介手数料を受け取ることができると定められています。
そして、借主から受け取ることができる報酬の額は、借主の承諾がある場合を除いて、賃料の1ヶ月分の50パーセントまでしか受け取ることができないと定められています。借主の承諾があれば賃料の1ヶ月分を仲介手数料として受け取ることができるとされています。
借主の承諾を得ることができなければ、残りの賃料の1ヶ月分の50パーセントは家主から貰いなさいといのが法律の原則となっています。
しかし、これまで不動産業者は、賃料の1ヶ月分の仲介手数料を借主から貰っていました。
東京地裁の判決は国土交通省の告示の通りの原則論に従って、借主から受け取ることができる仲介手数料は賃料1ヶ月分の50%という判断を示したものです。東京地裁の判決に従えば、これまでのとおり、賃料1ヶ月分の仲介手数料を支払ってもらうためには、借主の事前の承諾が必要となります。
そして、賃料1ヶ月分の仲介手数料を支払うことの承諾が有効といえるためには、原則は半月分なのだけれど、1ヶ月分を支払ってくださいと説明しなければならないでしょう。
しかし、このような説明を受けて1ヶ月分の仲介手数料を支払う人はいません。
他方で、現実問題として賃貸オーナーから、残りの半月分を請求することもできません。
そうすると、不動産業者にとっては、仲介手数料収入が半減するという結果となるのです。
東京地裁の判決はまだ確定したものではありませんし、この裁判例が一般化しているものではありませんが、この裁判の行く末を見守る必要があると思います。判決文を入手できれば詳しく分析する必要もあるかと思います。
賃貸オーナー様・不動産会社様から依頼を受けて不動産訴訟を多く扱っている当事務所は、この裁判例の帰趨を見守って、今後のブログでも取り上げる予定です。