賃貸物件で孤独死があった場合に大家がすべき対策

アパート・マンション内での孤独死・自殺があったというオーナー様からのご相談が増えています。

孤独死・自殺を発見されるのはほとんどの場合異臭騒ぎがあって、オーナーや管理会社が鍵を開けて入室した場合が多いのではないでしょうか。そのため、部屋を特殊清掃する必要がありますし、壁や床に異臭が染みついていることもあります。

特殊清掃の費用だけで10万円近くかかりますし、壁や床の異臭を除去するために壁を張り替えたりするとなると、100万円もの費用になります。

異臭等を早く除去するためには部屋の中の荷物を出して清掃を行う必要があります。しかし、オーナーは部屋の荷物を勝手に運び出したり処分したりすることはできません。相続人がいる場合、部屋の中の荷物は相続人が相続しているからです。また、清掃費用等は誰が負担するかというと、亡くなった方の相続人が負担するということになります。

そこで、オーナーとしては一刻でも早く相続人に連絡して、部屋の荷物を撤去してもらうことと、清掃費用を支払ってもらうことの交渉をする必要があります。

しかし、孤独死するような方は、相続人がいない場合もありますし、相続人が相続放棄をしてしまうこともあります。特に、相続放棄は相続開始を知ってから3ヶ月以内にすればよいので、3ヶ月も清掃を行えないということもあるのです。

私の経験では、相続放棄が完了するのを待っていたため長期間清掃を行えず、上の部屋の住人が異臭のために引越することになり、その引っ越しための費用をオーナーが負担しなければならなかったというケースもありました。

こうなるとオーナーにとっては踏んだり蹴ったりの結果です。事故物件ということで家賃も下げなければなりませんし、清掃等の費用はオーナー負担となり、大きな損失となります。

相続人は、相続財産の処分をすると相続放棄できなくなることを理由として清掃をすることを拒否されることもあるので、速やかな清掃が行えなくなることもあるのです。

しかし、

  • 価値のない物を処分しても相続放棄はできる。
  • 荷物を出して管理しているだけは相続放棄はできる。
  • 相続人は、相続放棄をしても相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないという義務が生じるため、清掃できないことで生じた損害の賠償責任を負う場合もある。

このようなことを説明をして、相続人に荷物を引き上げてもらうか、全く無価値なものしか残っていない場合は処分して貰って、清掃を行うこともあります。相続放棄を考えている相続人が心配しているのは、荷物を撤去をしたことによって相続放棄ができなくなるのではないか?ということだからです。

また、相続放棄を検討している相続人にはいろいろな条件を出して交渉して相続放棄をしないようにする必要もあると思います。例えば敷金以上の損害賠償を求めない等の条件を出して、荷物の撤去をお願いすることもあります。これで相続人は放棄しないこともあります。

孤独死があった場合の原状回復費用として認められる範囲

東京地方裁判所平成29年9月15日判決では、大家が請求した原状回復費用63万6321円が認められています。特に、死臭が残るなどしたため、大掛かりな原状回復が必要として55万3284円を認めている点が注目されます。

参考

「(3) 原状回復費用について
  ア 証拠(甲6の1・2、甲8の1~4、甲18)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、〈1〉クロス剥がし及び畳処分費用として合計4万3200円、〈2〉害虫対策費及び養生費として1万1437円、〈3〉応急の原状回復をする間、作業車の駐車のため、原告使用車両を時間貸し駐車場に駐車せざるを得なくなったことによる駐車場代として1400円を支払ったことが認められる。
  イ 証拠(甲7、18)及び弁論の全趣旨によれば、遺体が2か月半放置されたことにより死臭が残るなどしたため、大掛かりな原状回復が必要となり、その費用として55万3284円が必要となることが認められる。
  ウ 証拠(甲9、18)及び弁論の全趣旨によれば、亡Aは本件建物の鍵を1本紛失して返還していないため、鍵の交換費用として2万7000円が必要となることが認められる。」

 

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